2011年5月8日日曜日

海外で広がる古姓瑶子の世界、NY拠点に活躍する気鋭のイラストレーター。

米ニューヨークを拠点に活動する日本人イラストレーター、古姓瑶子(ふるしょうようこ)さんの個展「FROM MY WORLD TO YOURS」が、
2010年12月1日から2011年1月2日まで、香港随一のショッピングセンター・ハーバーシティ(海港城)のギャラリーで開催された。
2007年オープンの同ギャラリーで個展を開いた日本人アーティストは、草間彌生(2007年)、吉田翔(2008年)、関根伸夫(2008年)に続く4人目。
このたび古姓さんが個展開催に合わせてニューヨークからはるばる香港を訪れるとの情報を聞きつけ、ナリナリドットコム中国特派員がお話をうかがった。

古姓さんは現実と空想を織り交ぜたようなドリーミーな世界を描く新進気鋭のアーティスト。
今回の個展では近年制作された絵を中心に、古姓さんの絵があしらわれたエコバッグやシャツ、オブジェなど、数十点の展示が行われた。

彼女は2007年の東京・渋谷「LE DECOギャラリー」を皮切りに、これまで日本や米国で計5回の個展を開催しているが、日本以外のアジアで個展を開くのは今回が初めて。
ギャラリーの関係者によれば、同ギャラリーの責任者が日本の雑誌に掲載されていた古姓さんの作品をいたく気に入り、今回の個展開催が決まったという。

その作品は豊かな色彩と細やかな模様によって、ポップでファッショナブルな印象を受けるが、一歩間違えればおどろおどろしくもなるような危険性も秘めており、
“世間一般に考えられている少女”と“現実の少女”とのギャップを見る者に与えてくれる。彼女が若い女性だけでなく、多くの男性にも支持されているのは“可愛さ”だけではない何かが、そこに映し出されているからなのかもしれない。

◎世界的な企業との仕事も

現在までに100点以上の作品を描いている古姓さんだが、その活躍の場は広い。
ニューヨークの英字フリーマガジンの表紙、世界的な化粧品メーカー・メイベリンの広告、米デパート・ロード&テイラーのファッションイベント、アパレルメーカー・ケッズのスニーカーデザイン、ミュージシャンのCDジャケットなどなど、ジャンルに縛られない活動を積極的に行っている。

これまでの受賞歴も華やかで、アートディレクターズクラブ(YG7)、アメリカンイラストレーション(AI28)、Sociery of Illustrators 51st Annual(広告部門)など、2009年の1年間だけで5つの賞を受賞。
イラストレーターとして生計を立てていくのは容易いことではないが、まだ若い彼女が海外で実現している事実は、ほかの日本人若手アーティストにとって発奮材料となるのではなかろうか。

その点を古姓さんにたずねると、即座に「私はラッキーなんですよ」と謙虚な答えが返ってきた。
日本で個展を開いた際には、1998年のサッカーW杯フランス大会公式アルバム収録曲(小室哲哉とジャン・ミシェル・ジャールのプロデュース)でボーカルを務めたことでも知られる歌手のOLIVIAが偶然訪れ、
そこからOLIVIAの妹であり、エレクトロニカアーティストでもあるキャロラインと知り合いになり、彼女のCDジャケットを手がけることに。  

また、個人的に敬愛していた映画監督ミシェル・ゴンドリー氏(2004年のアカデミー脚本賞受賞作「エターナル・サンシャイン」など)の似顔絵をホームページに掲載していたところ、
人づてにその話が監督に伝わり、「作品を購入したい」と連絡が来たという。今回の個展でも偶然イタリアのアパレルメーカー・ディーゼルの関係者が訪れ、「ぜひコラボしたい」と申し出ている現場を目撃した。  

彼女を取材した日はちょうど香港のクリスマスセールの頃合いで、香港だけでなく、中国大陸からのたくさんの観光客で賑わっていた時期。
ギャラリーを訪れるお客さんは香港人はもちろん中国人や外国人も多く、古姓さんの作品を興味深げに眺めていた。広州から訪れたという中国人女性に話を聞くと
「何か訴えかけてくるものがある」と語り、「画集があるなら購入したい」と、早くも彼女の絵の虜となっていたようだ。

◎現在とこれから

古姓さんは現在もニューヨークで暮らしながら、作品の制作に没頭している。ニューヨークには世界各国のアーティストやその卵たちが集まってくるため、作品を制作する上で「とても刺激的で活動しやすい環境」なのだという。
アトリエもほかのアーティストとシェアしており、彼らから刺激を受ける日々を送っているそうだ。

「まだ私は駆け出し」と語る古姓さん。18歳のときに家出同然の状態で日本を飛び出し、単身ニューヨークに渡った彼女の当面の目標は「もっともっと多くの人たちと関わり、活動の場を日本や米国だけでなく、世界中に広げていくこと」。
今年は家具メーカーとコラボしたファニチャーも販売される予定で、個展の「FROM MY WORLD TO YOURS」というテーマと同様、現実の世界にも少しずつ「古姓ワールド」が広がりつつある――そんな気にさせてくれる個展だった。


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